2025-05-07

緑の地平線(青という言葉には、緑も含む意味があった)

 緑の地平線(リンク)

 昭和10年(1935)に制作された同名の映画主題歌だそうです。軽やかで耳に心地よいメロディ、特に間奏の素晴らしさには感銘を受けています。原作になった小説の内容や、映画化されたストーリーについては全く知らないのですが、歌詞から推察すると、この歌の舞台になっているのは北海道の釧路近辺のように思えます。


「リラ(ライラック)の花さえなつかしや」、「霧の都の夜は更けて」、「緑うれしや地平線」などの言葉から勝手にそのように解釈したのですが、違っているかもしれません。

 

ところで、表題曲タイトルの『緑の地平線』というのは、少し耳慣れない言葉のように感じます。普通に考えると、水平線の場合は“青色”、地平線というと砂漠や草原のイメージが強いため、黄色っぽく思われがちです。周りを海に囲まれた日本では、水平線を目にする機会は多いのですが、国土に無数の山川があり大草原的な土地は限られているため、国内で実際に地平線を目にすることは、ほとんどありません。


「緑の地平線」を文字通りに解釈するなら、南米アマゾンなどジャングル地帯で、かなり高い場所から見渡した光景、もしくはアフリカの大草原地帯でしか見られない光景だと思いますが、国内の北海道でも目にすることが出来る場所があるのでしょうか。

 

 ところで、私は以前から日常生活の中での色の表現で、「緑」と「青」の使われ方に違和感を覚えることがありました。日本の横断歩道や交差点に設置されている信号機の色は、赤・青・黄とされています。しかし、青とされている信号色は実際には青色ではなく緑色に見えるのですが、青と呼ばれているのは何故なのでしょう。昔は本当に青色だったのが、ある時点で緑色に変わったのに、呼称だけがそのまま使われているのでしょうか。この点を詳しく調べてみると、興味深い事実が明らかになりました。

 

実は、古くから日本語では「青」という言葉が、現代でいう青色だけでなく緑色も含む広い範囲の色を指していたようです。例えば若い頃を表す「青春」や、若々しい植物を表す「青葉」など、実際の色と現代の感覚とは異なる使われ方をしていたのです。このため、信号機の青色が、技術的な理由や視認性の向上のために現在の緑色に変わっても、呼称としては「青信号」が伝統的に使われ続けています。

 

また、色の名称が必ずしも厳密に現代の色分けに沿っていなかった、歴史的経緯も影響しているようです。つまり昔の日本では青という言葉に緑も含む意味があったため、現在でも交通信号の「青信号」という呼び名が使われているのです。

こうした歴史的背景を知ると、普段何気なく使っている『青信号』という言葉にも、日本語の奥深さを感じさせられます。

0 件のコメント: