春の訪れを感じると、ふと心の中に浮かんでくる歌があります。昔、何気なく耳にしていたそのメロディが、春風に乗りそっと蘇ってくるようです。
今回は、そんな「春」をテーマにした、子ども向けの美しい歌を、二曲ご紹介したいと思います。どちらも外国にルーツを持つ短い歌ですが、シンプルで印象的なメロディが心に残る名曲です。
■ 春がよんでるよ
1963年の春、NHKの音楽番組『みんなのうた』で放送された一曲で、原曲はポーランド民謡だそうです。メロディだけは、はっきり記憶していたものの、タイトルや歌詞はうろ覚えで、ネットなどで探してもなかなか見つかりませんでした。しかし、最近ようやく、その音源を探し当てることができました。
この曲を歌っているのは、東京・荒川区の「荒川少年少女合唱隊」ですが、その透明感のある歌声は、本当に素晴らしいです。児童合唱団は全国に多数ありますが、その中でも秀逸な歌唱力を有する合唱団だと思います。
海外公演も何回か実施されているようですが、児童合唱団は毎年メンバーが大きく入れ替わるので、常にその実力を維持していくのは、大変なことでしょう。
この曲が生まれたポーランドにも、「カテドラル少女合唱隊」という、ヨーロッパでは有名な合唱団があり、数年前に日本での公演も実施されています。その公演の中では、この曲も原語で歌われたのかもしれません。
■ 春風
この歌もまた春の空気を優しく伝えてくれる一曲です。冒頭のフレーズから、暖かく柔らかい春風のイメージが一気に膨らむ、素晴らしい唱歌です。
原曲は、アメリカの作曲家スティーブン・フォスターによる歌曲で、南北戦争以前に、黒人奴隷の哀しみを歌った作品でした。それが明治時代に日本に渡り、やがてこのような春の情景を描く、やさしい歌へと生まれ変わったのです。
ただ、残念なことに、今この歌を知っている小学生はほとんどいないでしょう。いや、それどころか、親世代や学校の先生ですら、この歌を知らない人が多いのではないかと思います。音楽の教科書から姿を消して久しく、テレビなどのメディアでも紹介されることは無いため、忘れられつつある歌の一つになってしまいました。
歌詞が文語調であることが、姿を消した理由かもしれませんが、それでもなお、この歌の持つ優しさや美しさは色褪せていません。『春がよんでるよ』と同じく、この『春風』も、覚えやすい歌詞と、非常に美しいメロディを持っています。
こうした曲こそ、もう一度子どもたちの音楽教科書に、取り上げてほしい気がします。春風がそっと吹き抜ける季節になると、ふと口ずさみたくなる歌、記憶の中で今も生き続けるこのような歌が、これからの世代の、子どもたちの心にも届いてほしい、と願っています。。
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