“青春時代”をテーマにした歌は、数えきれないほどありますが、底抜けに明るく、力強い“青春讃歌”と呼べるような楽曲は、案外少ないように思います。そうした中で、今回ご紹介する2曲は、未来への夢と希望を感じさせ、聴く人に力と勇気を与えてくれる、貴重な青春歌謡です。
■ 青春のパラダイス
昭和21年(1946年)の発売。敗戦からわずか1年後、戦後復興がようやく動き出した時期の歌です。リズミカルで明るいメロディーは、当時の人々の心に希望の光を灯し、復興の活力となったことでしょう。
この歌には、【青春の躍動、そして未来への希望(戦争は終わった。これからは我々若者の時代だ)】という、“新生日本の賛歌”としてのメッセージが込められているように感じます。
戦前の抑圧的な体制や封建的な価値観から解き放たれた喜びを、全身で謳歌しているように感じられるのです。そんな気持ちが、青春の血が騒ぐような躍動感あふれるメロディーと相まって、聴く人の心に響き元気づけてくれるのでしょう。
なお、この曲の間奏部分は、まるで独立した楽曲のような完成度で、実に素晴らしい出来栄えです。ちなみにこの歌は、近頃、浅草や上野を中心に街頭演奏で懐メロを披露し人気を集めている『東京大衆歌謡楽団』の得意レパートリーのひとつでもあります。
昭和39年(1964年)にリリースされた、舟木一夫のヒット曲の一つです。『青春のパラダイス』の頃から、20年近く時代は進んでいますが、同様にリズミカルでテンポ良く、聴いていると心が弾む歌です。
「青春時代」の特徴については、リンク先の解説に次のような表現があります:
【何ものとも知れぬものへの憧憬に胸を膨らませ、永遠の友情や愛を信じ、将来への野望をもち、挫折し、ときに裏切られ、鬱屈し、失望の底から希望を復活させるといったふうに、あらゆる感情をフル稼働させていた青春時代。】
まさにその通りと言えますが、この言葉を味わう上では、当時の時代背景を踏まえておくことも大切だと思います。昭和39年といえば、東京オリンピックの年。日本が高度経済成長の入口に立ち、誰もが漠然と「明るい未来」を感じられた時代です。
たとえ、その時点で挫折や不遇を経験していた若者であっても、「将来はきっと良くなる」と信じられる空気が、社会全体に流れていたのではないでしょうか。
それに比べて現代は、「先行き不透明」という言葉が象徴するように、未来に対する確信が持ちにくい時代です。明るい希望を描くことが難しくなっている今の若者たちは、かつてのように“良き青春時代”を、素直に謳歌することが難しくなっているのかもしれません。
こうした歌を聴いていると、心の中に、かつての“青春の輝き”が、ふと蘇ってくる気がします。いつの日か、こうした“底抜けの青春賛歌”が、新たなかたちで蘇る時代が、再び訪れることを、願わずにはいられません。
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