リラ (Lilas)はライラックの事で、日本では春4~5月頃に咲きます。北海道など冷涼な地域の街路樹としてよく植えられていて、紫色や白色の花を咲かせます。
花弁にはずっしりとした量感があり、上品な色合いと芳香を持つため、特に北海道では人気の高い花です。この花が咲き揃う季節には札幌で毎年「ライラック祭り」が開催され、約400本のライラックが咲き誇る「大通会場」を中心に、音楽祭など様々なイベントが行われています。
この歌は、作詞:寺尾智沙、作曲:田村しげるによる作品で、名曲『白い花の咲く頃』の翌年に発表されました。この二人(夫婦)が作詞・作曲した他の歌と同様にロマンを感じさせ、淡く切ない旋律が琴線に触れ、心を揺さぶられます。
この二人は他にも抒情的な名曲を数多く残していますが、調べているうちに、『南の風吹きゃ』というタイトルの、あまり知られていないラジオ歌謡が見つかりました。
1.甘い南の風が吹きゃ ほんに大きな夏みかん
爺にせがんで背を借り もいだあの日がなつかしや
2.すいいみかんも あまいもの いつも二人で分け合うて
仲良うしとうた隣の娘 嫁にいったと いう話
3.母の便りを なんべんも 読んでるうち つい泣けた
まるい大きな 黄色い実 今年も仰山 なったげな
童謡風のゆったりとした曲調の歌ですが、この歌詞は中々味わいがあります。この歌詞の背景をじっくり想像していると、次のような場面が目に浮かびました。
【南国の、夏みかんが採れる村で育った若者が、今は都会で、一人暮らしをしています。田舎の母からの便りが届き、そこには幼馴染で仲がよく、微かな恋心を抱いていた隣の娘が嫁にいったと書かれていました。その便りを何度も読んでいるうちに、爺にせがんで背を借り、もいだ夏みかんを、その隣の娘と二人で仲良く分け合って食べていた、幼い頃を思い出し、つい泣けてしまった。】という、趣意の詩のように解釈しました。
よくある光景で、平凡と言えば平凡な歌詞ですが、その中にこの歌詞を書いた寺尾智沙さんの並々ならぬ感性が感じとれます。ごく当たり前の光景を描きながらも、その背後に主人公の胸の内を自然に滲ませる詩というのは、誰にでも書けるようでいて、実はなかなか書けるものではありません。寺尾智沙ファンの一人として、この歌を発見したことを、とても嬉しく思っています。
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