2025-07-19

潮風が吹き抜ける町(郷愁がにじみ出る抒情歌)

  潮風が吹き抜ける町(リンク)

 時折、何の前触れもなく、昔聴いた歌の一節が心の奥から浮かび上がってくることがあります。それはまるで、潮風に乗って遠い記憶がふと吹き寄せるような感覚です。


この歌もそうで、ある時ふと、「~胸にひびく あの潮騒 はるかな 潮騒」という歌詞の一節と旋律を思い出しました。舟木一夫の歌のように思っていましたが、題名も分からず、ネット検索を繰り返しても、なかなか見つからなかったのです。 


  結局、この歌は西郷輝彦が歌った『潮風が吹き抜ける町』というタイトルの歌だったことが分かりました。雰囲気的には舟木の歌のように感じますが、それもそのはずで、歌っていた西郷本人がある時、この歌は自分に合う歌ではなく、舟木が歌うべき歌だったということを、舟木に話していました。西郷の追悼式で舟木一夫がこのエピソードを語り、その場でこの曲をしみじみと歌い上げたという事です。

 

一 潮風が吹きぬける町 浜茄子がゆれて咲く丘

  わがふる里 夜ごと 夜ごと

  胸にひびく あの潮騒 はるかな 潮騒

 

二 ちちははが 網つづる庭 妹が水をくむ井戸

  わがふる里 夜ごと 夜ごと

  夢にかよう あの面影 ほほえむ 面影

 

三 潮風が吹き抜ける町 麦の穂のそよぐ畦道

  わがふる里 夜ごと 夜ごと

  遠く聴くは あの歌声 幼い歌声

 

この歌は1967年(昭和42年)に発売されました。作詞は奥野椰子夫、作曲は米山正夫。歌詞の抒情性が高く評価され、日本詩人連盟大賞を受賞しています。

「潮風」や「潮騒」という言葉には、郷愁を呼び起こす不思議な力があるのかもしれません。特に、冒頭の「潮風が吹きぬける町 浜茄子がゆれて咲く丘」という一節には、静かな海辺の風景と郷愁がにじみ出ていて、心を打たれます。

 

『絶唱』や『夕笛』、に連なる抒情的な名曲の一つですが、今ではほとんど語られることもなく、時代の片隅に埋もれてしまっています。もう一度、このような歌が日の目を見ることはあるのでしょうか。このまま世間では忘れ去られようと、この詩情豊かな優しい歌詞と旋律は、私の心の中には何時までも残るでしょう。

 

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